AIは心理の仕事を駆逐するか?
タイトルの問いに対する回答を先に述べてしまうと
「心理の仕事の大部分は生き残る。だが一部、駆逐される部分はある」
ということになるかと思います。
現代はあらゆる事象がデータ化されて蓄積され、ネットワークで有機的に組み合わせて利用することが可能になり、それをAI(人工知能)が活用できるようになり、コンピュータが自発的に学習・判断ができるようになっており
第4次産業革命
の時代であると言われています。
人工知能はコンピュータが自分で考え、進化していくという特性から
人間の頭脳に取って代わると思われがちです。
そんな中、「ヒトの仕事はAIに奪われる」という人がいます。
かく言う私も、「だから仕事が無くなる前に資産形成しようぜ」というカンペキにうさんくさい話をもちかけられたことがあります(笑)
私の知人(だいたい飲み屋で知り合った人ですが 笑)に、AIの開発に携わっている人が何人かいて、心理屋としても興味ある分野だったので聞いてみたことがあるのですが
少なくとも現時点では、AIは与えられたデータからしか考えることができないので、完全に人間の脳と同じことをすることはできません。
心理の仕事に関して言えば、大部分の人が携わるであろう心理面接やコンサルテーションといった領域は現段階のAIでは不可能です。
では、心理の仕事はAIには淘汰されないぜ!!と言えるかというとそうとも言い切れない部分があると私は思います。
それは何かというと、心理検査の領域です。
数字で結果を出す質問紙なんかは、AI以前にエクセル組んでも処理できるでしょう。
というと、「いやいや、心理検査は数字だけじゃねえよ観察所見とかも大事だよ」と言われる方もいるでしょうが
身体領域の医師なんかにとっては
「観察所見とか知らねえよ!カットオフ値の上なの?下なの?」としか思ってない人がけっこういます。
もちろんそういう人だけではありませんけども、医師で心理学的検査の質的な面まで考えられるくらい丁寧に考えられる人がどれくらいいるかというと…ね。
ちなみに、質的な部分はAIには無理、となると知能検査、ロールシャッハ、バウムテストあたりはどうなの?と思われそうですが
おそらくはスコアリングの補助としてはAIは現時点でもかなり使えると思います。
知能検査やロールシャッハやバウムテストにおける対象者の反応をそのままAIに分析させるには、まだ十分な精度を得られないのではないかと思うのですが、
身体領域では、会話形式のやりとりから「どんな疾病が疑わしいか」を提案するシステムが既に出来上がっているそうです。
それを応用すれば、「こういう反応はこのようににスコアリングされる可能性が高いです」というようなスコアリングの補助を担うのは現時点でもかなり有力だと思います。
というわけで、心理の仕事がAIに奪われるということはすぐには起こらないと思うのですが
質問紙検査や神経心理検査しかやっていない、という専業テスターは身の危険を感じておいたほうがいいかもしれませんね。